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自動干満システム A.T.S(エア・タイド・システム/Air Tide System)

  1. プロローグ
  2. 自動干満システム A.T.Sの特徴
  3. 自動干満システム A.T.Sの構造と原理
  4. タイマー設定例
  5. 用意したもの
  6. エピローグ

プロローグ

先日、石垣島へヤドカリ観察へ行ってきましたが、 そこで見たマングローブ林や干潟に、すっかりと心を奪われてしまいました。 これはもう、干潟水槽を作るしかないっ!

とは言え、本当に干潟を再現すると、濾過が大きな問題となります。
なので、従来のナチュラルシステムへ干潮と満潮を取り入れて、 干潮時に「干潟風味」を味わおうと考えました。
そこで必要なのが、干潮と満潮を自動的に再現するシステムです。
うーん。。。考えるのと作るのが億劫なので、なるべく避けてきたシステムですが、 もうそんな事も言ってらんない!
さぁ、いざ実践。遂に自動干満システムの製作です。

でも、どうせ作るなら、他にはないアイデアを盛り込んだり、従来の欠点を克服しつつ、 もちろんなるべくコストを掛けない方法で実現したいモノです。 そして、遂にひらめいた!
その仕様とは、水流ポンプを一切使わず、1万円程度で構成可能な、 とってもエコな自動干満システムです!
まさに今の時代にピッタリなエコ仕様ですよ。

「え?どうやって?」という声が聞こえてきそうですね(笑)

では、その夢のようなシステムを、一体どうやって実現するのか?
それは、ごくごく普通のエアポンプを使うのです。 みんなの家にも一台くらい余ってませんか?
仮に大きなモノを買っても、せいぜい3,000円ですしね♪

自動干満システム A.T.S の特徴

  1. 総制作費1万円程度の低コスト設計
  2. 高価で消費電力の大きな循環ポンプ類を一切使用しないエコ設計
  3. 消費電力が小さく電気代のかからないエアポンプ方式で家計に優しい省エネ設計
  4. 干満共に水位変移完了後は保持電力を必要としない省エネ設計
  5. 海水を自動的に曝気処理(エアレーション)して水槽へ戻す安心設計
  6. 内圧制御用エアチューブへの海水逆流防止設計
  7. 水槽側に1本の細いサイフォンパイプ(エアチューブ)を設置するだけのシンプル設計
  8. 設定・調整次第でリアルな水位変化が実現可能
  9. その他、水位変化がきわめて緩やかなため、砂を巻き上げることもありません

こりゃぁ~特許でも取ろうかな~・・・なんて冗談です(笑)
みんなで自由に作って楽しみましょうよ♪
でも、売っちゃダメよ(汗)

どうですか? 作ってみたくてうずうずしませんか?(^^

自動干満システム A.T.Sの構造と原理

構成図

以下の構成図は、とってもエコな自動干満システム A.T.S (エア・タイド・システム/Air Tide System)の基本原理です。 ちなみに今回のシステムは小型水槽向けを想定していますが、 高低差やサイフォン径等の設計次第では大型水槽にも使えるかも?

このシステムでは、ポリタンク×1ヶ、24時間タイマー×2ヶ、 エアチューブ(サイフォン用とエアポンプ用)×2M程度、 フロートスイッチ(逆作動へ変更)×1ヶ、逆止弁×2ヶ、電磁弁×1ヶ、 エア用3つ又×2、エア流量調整バルブ×2ヶ、 その他配線類などを使用しています。 また、水槽内やポリタンク内でのサイフォンパイプは、 エアチューブに別途アクリルパイプ等を適宜接続して構成してください。

システム始動前の準備

まず、水槽に満潮水位の海水を充填しておきます。 そしてサイフォンパイプ(エアチューブ)の先端を干潮水位となる位置へ配置します。 この時、干満差による水量がポリタンクに収まりきるように計算してください (且つポリタンク内の逆止弁Bが水没しないように)。 更にサイフォンパイプは絶対に外れないように頑丈に固定してください。 万一外れて干潮水位よりも下になると、ポリタンクに必要以上に海水が流れ落ち、 電磁弁から水漏れが発生します。

次に、ポリタンク回路のエアポンプ側のエアチューブを外して、 そのエアチューブを口で吸引し、水槽からサイフォンの原理で海水をポリタンクへ引き込みます。 サイフォンが始まれば、あとは勝手にポリタンクに海水が降りてきます。 これをサイフォンが途切れるまで(水槽が干潮水位なるまで)続けます。 この時、サイフォン切れでサイフォンパイプにエアが噛んでも問題はありません。 最後にエアチューブを元通りエアポンプへ接続します。 尚、もしポリタンク内で逆止弁Bが水没するようなら、水位差を減らしてやり直してください

その他、ポリタンク内のフロートスイッチは逆作動タイプが必要です (高水位時にオン/低水位時にオフ)。 なので、フロートを上下入れ替えて逆作動に変更できるタイプが便利です。
また、フロートスイッチの動作点は、 必ずポリタンク内のエアがサイフォンパイプへ送り出されてしまう少し手前で働くようにしてください。 万一サイフォンパイプにエアが入ってしまうと、次回からサイフォンが働かず、 ポリタンクに水槽の海水が落ちてこなくなります。

以上で、自動干満システムの始動前準備が整いました。

満潮フローチャート

  1. 満潮タイマーにより、エアポンプが通電します。
  2. 水没中のフロートはオンですから、ポリタンク内にどんどんエアが充填されていきます。 この時、ポリタンク内では、エアポンプからのエアは逆止弁Bを通過できませんから、 逆止弁Aを通りエアストンから供給されます up air 。 この回路により、ポリタンク内の海水のエアレーションも兼ねています。 (内圧により酸素が溶けやすい利点もあるかも?)
  3. ある程度ポリタンク内の圧力が上昇すると、ポリタンク内の海水がサイフォンパイプから水槽へ注がれます up water
  4. ポリタンク内の海水がほぼ無くなりフロートスイッチが働くと、 タイマーからの通電をカットしてエアポンプが停止します。
    (満潮タイマーは少し余裕をみて長めに時間を設定しておくと良いでしょう)
  5. 以上のフローにより、水槽は自然と緩やかに満潮になります。

干潮フローチャート

  1. 干潮タイマーにより、電磁弁が開きます。
  2. ポリタンクの内圧が電磁弁により解放されるため、それまで止まっていたサイフォンが再スタートします。 この時、ポリタンク内の内圧は、逆止弁Aを通過できませんから、逆止弁Bを通りエアのみが解放されます down air 。 この仕組みにより、エアストン経由で海水がポリタンク外へ逆流することを防止しています。
  3. サイフォンにより水槽の海水はどんどんポリタンクに集まります down water
  4. 水槽の水面が干潮水位となると、サイフォンが止まります。 この時サイフォンにエアが噛みますが問題ありません。
  5. 以上のフローにより、水槽は自然と緩やかに干潮になります。

システム試作品外観

この写真は干満システムの試作品です。

しかし、このままの仕様では、電磁弁解放による干潮所要時間が約20分ほどで完了してしまいました。
そのため完成品では、電磁弁後方に速度調整用のバルブBを割り込ませて、 バルブBを微妙に調整して、最低でも1時間以上掛けて干潮が完了するように調整しました。

また、エアポンプにはたまたま流量調整バルブが内蔵されていましたが、 これが無い場合は別途バルブAを割り込ませて、 更に厳密に調整すれば満潮時の所要時間も1時間以上に延ばすことが出来ると思います。 (今回の僕の条件ではエアポンプによる満潮所要時間は偶然ちょうど1時間程度でした)

あと、エアポンプはなるべく大きなモノを使用することを推奨します。 テスト中の印象では、一定以上の出力が無いと、 水槽へ海水を送り出すだけの内圧が得られないように感じました。 (今もほぼ全開状態に設定しています)

ちなみに僕が用意した水槽は、W34×H21×D19 cm のガラス水槽です。 計算上では約13L入りますが、実際には満潮時で5L程度を充填し、干潮時は1Lくらいになるようにしました。 また、水位差が約4Lなので、ポリタンクは5Lのモノを用意しました。 それで得られる水槽側での干満水位差は約6cm前後となりました。 また、水槽とポリタンクの高低差は約1M程度、サイフォンパイプにはエアチューブを使用、 エアポンプは0.5~2.5L/minの出力のものを使用しました。

タイマー設定例

干満制御用に用意した各タイマーは、アナログ式の安価な24時間タイマーを利用したので、 あまり細かな時間設定が出来ませんが、それでも15分単位で設定できるので十分かと思います。

以下の設定例は、干満それぞれに掛かる所要時間を大体1時間程度となるように調整した場合のものです。 満潮時の速度調整は、エアポンプ内蔵のバルブを利用するか、別途流量調整バルブAを接続し、 エアの流入量を調整してください。 干潮時の速度調整は、エア抜き用の電磁弁に同じく流量調整バルブBを別途接続し、 エアの排出量を調整してください。
尚、別途バルブによる干満速度を調整しない場合の各変移時間は、エアポンプの出力、 サイフォンの径、水槽とポリタンクの高低差により決定されます。

タイマー設定例

単に干満が得られれば良いと言う場合は設定Aを、 よりリアルに干満を再現したい場合は設定B・設定Cあたりを参考にすると良いでしょう。 僕は現在、設定Aで運転しています。これから色々と試してみるつもりです。

上の各例では、満潮時の時間を干潮時よりも少し長めにとっています。 これは、僕の水槽の場合、エアレーションのみで水槽内の水流を兼ねているためと、 このエアレーションによる水流が満潮時にしか十分に得られない構造であるためです。 (この構造による問題は、別途作成した「塩ダレ防止エアレーション水流システム (近日公開予定)」によるものです)
よって、水槽内でのエアレーション、水流が十分に得られている場合は、 干潮と満潮それぞれの時間は配分を均等にしても良いと思います。

用意したもの

今回使用した部品一覧を載せておきます。

24時間タイマー エアポンプ エア用電磁弁 フロートスイッチ エア用逆止弁 エア用流量調整バルブ エア用3つ又 エア用ジョイント

24時間タイマー PT24(REVEX) ¥1,000×2
¥2,000
エアポンプ non-noise S500 最大2.5L/min (ニチドウ) ×1
¥2,500
電磁弁 タケノコ継ぎ手付き S05D AC100V ×1
¥2,600
フロートスイッチ MFS17-D-2 50W ×1
¥2,000
エア用逆止弁 ¥350×2
¥700
エア用流量調整バルブ ¥300×2
¥600
エア用3つ又 ¥150×2
¥300
エアチューブジョイント ×3
¥150
エアチューブ ×2M
¥200
エアストン ×1
¥200
アクリルパイプ 内径6mmφ ×1M
¥500
ポリタンク 5L ×1
¥1,000
その他、配線類など
¥1,000

REVEXの24時間タイマーPT24はホームセンターで激安の990円でしたが、通常は1,500円くらいしてるそうです。
ニチドウのエアポンプ non-noise S500 には逆止弁が1ヶ同梱されてますので、別途注文分は1ヶで済みますね。 また流量調整バルブも内蔵なので、こちらも別途注文分は1ヶで済みます。
電磁弁、フロートスイッチは通販で注文しました → 水草用品通販専門店 GREENS (親切なお店でした)
ちなみに、電磁弁は動作中とても熱くなりますので、 周囲に温度耐性の低いモノがあると変形したり溶けたりするのでご注意ください。 もちろん、火傷しないようにネ。
エア用流量調整バルブは、やどかり屋 に良いモノがあったので取り寄せました。カートには非掲載のようなので電話で注文してね。 ココ見たと言えば判るかも。

その他、ポリタンク内のパーツ組み立て例

エアレーション兼内圧制御用逆止弁回路 サイフォンパイプ

内圧解放用逆止弁(写真左上側)はなるべく上方に設けてください (ポリタンク内で海水を吸い込まない位置)。

フロートスイッチはなるべくポリタンクの底面ギリギリになるように設けてください (ポリタンク内の海水余剰分を極力少なくするため)。 また、サイフォンパイプに誤って空気が送り込まれてしまわないように、 ポリタンク内にギリギリ僅かな海水を残してフロートスイッチが作動するようにしてください。 さらに、写真ではフロートスイッチ配線に一般AC100V用のコンセントプラグを コネクタ代わりに使用していますが、 この場合間違っても通常のAC100Vコンセントに差し込まないように気を付けてください。 ブレーカーが落ちます(汗)。 他のコネクタ・プラグ類を使う場合でも、 配線は 自動干満システム A.T.Sの構造と原理 の図を良く見て、 確実に結線してください(図ではエアポンプへの配線の片側をフロートスイッチ経由としてあります)。
また、フロートスイッチは元々防水ですが、さらに入念に防水処理を施しておくことを推奨します (特に配線部など)。

ちなみに、圧力が掛かりそうな各エアチューブの接続部にはインシュロック (ロックタイ)による締め付けを施しています。

その他、ポリタンク(ポリプロピレン樹脂)周りの接着には、 コニシのGPクリアーというボンドを使用しました。 24時間ほど寝かせておくと、バッチリ接着できました。

エピローグ

システム外観

なんとか使用に耐えうるモノが無事完成しました。
見た目が悪いけど(苦笑)

たまたま今手元に工具類が一切無い状態での製作でしたが、ハサミ、カッター、ドライバーのみで製作できました。 そのため、配線は圧着を必要としない方法をとりました(コンセントの♂と♀を活用)。 尚、ポリタンクのキャップの穴あけは、熱した安全ピンで気長にグリグリ・・・(汗)

ちょっと気になるのが、ポリタンクが内圧上昇により結構膨張します。 あまり心臓に良くないので、しばらくはナイロンを敷いておくか、別ケースに入れておいた方が安心かな。 ま、破裂することは無いとは思いますが。。。

また、ポリタンクの機密性の保持には結構手間を掛けたのですが、どこからエアが漏れているのか、 サイフォンからチビチビと海水が降りてくるようで、水槽の水位が僅かだけ下がってきます。 あまり気にする量ではないし、ある意味それも干潮動作のひとつかな、と割り切ってますが(汗)

水槽の水位変化

今回の仕様では、とりあえず水槽の水位を6cm変化するようにしました。 水槽が小さいゆえに、僅か4Lの変化でこの水位差が実現されています。 大きな水槽ではポリタンクを相当大きくしないと、この水位変化は得られませんね。

あとは、左スペースにタイドプールを作ったり、マングローブを植える予定です♪

写真右側には、サイフォンパイプ以外に、もうひとつのパイプ類が見えていますが、これはまた別の回路で、 エアポンプのエアレーションを利用して水流を発生させる自作パーツ 「塩ダレ防止エアレーション水流システム」です (近日公開予定)。 また、水槽の下にはテスト的にパネルヒーターを敷いていますので、 もしこれで水温も維持できるようなら、コンセントの伴う機器を一切水槽に入れなくて済みます。素晴らしい!

但し、その分濾過能力が小さいため、生体はほとんど入れられないかも。チビヤドカリ数匹くらいかなぁ(苦笑)

あ。あと、サイフォンパイプの先端には、異物吸い込み防止の意味で、黒いスポンジを装着しています。 アクア用の何かの周辺パーツでピッタリのがありました。

最後に、いつもの事ですが、これを真似される方は、あくまでも自己責任でお願いします。 万一、水漏れや事故等があっても僕は一切関知しません。 くれぐれも構造や原理を良く理解した上で製作してください。 特に電気配線にはくれぐれも気を付け、ショートや感電等のないように注意してください。 写真に写っている各コンセント部は理解が甘いと本当に危険ですよ!