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赤い色素タンパクの吸収スペクトル

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今回は、今まであまり詳しく触れてこなかったハナヤサイやトゲサンゴの赤い色素タンパクについて、やや突っ込んだところまで触れてみようと思います。

思えば、僕が非蛍光の赤いサンゴの色素について言及を始めたのは・・・忘れた(笑)
・・・調べてみたら2009年末からでした。

  • 紫外線LED:応援部隊 - 2009/12/21

    フィコビリン系の青や赤の色素が優位に立って発現している色彩ならば、オレンジ帯域とグリーン~イエロー帯域、あと紫外線少々、てとこかしら。…

  • 紫外線LED:各ミドリイシの色彩変移 - 2010/1/3

    …白LEDに含まれる緑~橙の波長域により、フィコエリトリン系の鮮やかな赤の色素の発現にも有利に働き(色素が存在した場合)…

そう、この時期はまだハナヤサイやトゲサンゴ等の赤い色素タンパクを僕は特定できておらず、あくまでも海藻由来の赤い光合成色素フィコエリトリンに見立てて仮説を展開していました。はい、色素タンパクという言葉すら知らない時期です(汗)

* フィコビリンのうち、赤の色素タンパクがフィコエリトリン、青の色素タンパクがフィコシアニン

また、この頃は特にスギノキブルーの青い色素の正体解明に躍起になっていた時期で、その正体の根幹がブルー蛍光タンパクシアン蛍光タンパクであると確信する少し前の時期でしたから、相変わらず青い海藻の光合成色素フィコシアニンをスギノキブルーの色素タンパクに見立て、橙の波長を中心としたアンバー光を当てる事にこだわっていました。

色素タンパクの色揚げに有効な電球色LED

そうして、サンゴの赤や青の非蛍光色素を促進するには緑から赤に掛けての波長の照射が必要であるという仮説に基づき、実験を進めていた訳です。

それからしばらくして、予想通り実験ミドリイシがデコライト電球色2700Kの照射によってみるみる赤くなっていった事で、仮説は確信に変わりました。

アンバー光を当てて色揚げした赤い色素タンパク

この結果を経て、やはりサンゴの赤い色素タンパクもフィコエリトリンと似た特性を持つという確信に至りました。そしてそれは、その後の協力者の皆さんらによる実験でも、同様の効果が確認されていきました。
また、このフィコエリトリンが要求する吸収スペクトルのピークは緑の波長540nm前後ですから、そこから派生して

アクアT5の緑の突出ピーク波長540-550nmもトゲサンゴやハナヤサイに効く!

とも解釈しました。
そう、今でこそトゲサンゴには緑の波長というのは既知のノウハウになりましたが、そもそもこれは僕のフィコエリトリンの仮説から導いた解釈です。

赤い光合成色素フィコエリトリンの吸収スペクトルとアクアT5の3波長スペクトル

それから3年が経ち、僕もより高度な検証に取り組むようになりました。
そして2013年5月、ついにSPSの吸収スペクトルを自分で測定するまでに至りました。
すると、それまでの認識が塗り替えられる結果が得られました。
トゲサンゴのピンクや赤の色素タンパクが要求する吸収スペクトルは、フィコエリトリンとは若干特性が異なっていたのです。

↑トゲサンゴの反射スペクトルから抽出した吸収スペクトルの例(緑色のグラフ)
* 赤色のグラフは既知の赤系SPSの色素タンパク

あら、、、トゲサンゴの吸収スペクトルのピークって緑の波長じゃなかったのね!
確かに、他の文献 1. 2. 3. を見ても、多くが560-600nmの間に集中してますね!
てことは、必要だったのは橙の波長580nm前後かっ!
しかもそれは赤に限らず、青や紫などほとんどの色素タンパクに見られた特性でした。
サンゴの鮮やかな色素タンパクは、橙の波長580nmを欲するんだぜ~!

サンゴの色素タンパク36種の吸収スペクトル

改めて、赤系の色素タンパクとアクアT5のスペクトルを比べてみましょう。

赤い色素タンパクの吸収スペクトルとアクアT5の3波長スペクトル

そう、アクアT5が持つ緑の波長540-550nmは、相手がフィコエリトリンであれば吸収ピーク540nmをジャストミートできましたが、実際のトゲサンゴの色素タンパクの吸収ピークは570-590nmに集まっていたので、やや的外れな帯域を叩いていたことが判ったのです。しかもアクアT5の緑は帯域幅が10nm程度しかないので、叩ける範囲はかなり狭くピンポイントでした。にも関わらず、結果的にアクアT5でもトゲサンゴの色揚げに効果が得られていたのは、アクアT5の緑の波長強度が飛び抜けて強い事と、少なからず含まれている橙の波長580-590nmによる作用が要因ではないかと考えられます。
(簡単に言えば、100点は届かないけど50点を2倍で叩いて100点達成♪、みたいな)
また、色素タンパクの特性によってはアクアT5と相性の良いタイプもあり、例えばCP-560系あたりなら吸収ピークのおよそ8合目は叩けているように見えます。しかし、逆に吸収ピークの離れたCP-593系あたりに対してはせいぜい4合目しか叩けず、色揚げ率は半減するかも知れません。その場合、やはりフラットスペクトルの蛍光灯の方がオールマイティな色揚げが期待できそうです↓

赤い色素タンパクの吸収スペクトルと一般T8のフラットスペクトル

一方、デコライト2700Kのスペクトルカバー率は秀逸でした。改めて感動です↓

赤い色素タンパクの吸収スペクトルと電球色LED 2700Kのスペクトル

しかし、そのさらに上を行くスペクトルがあります。それが、KR93XP/KR93SPにも搭載されている580nmピーク・ニュートラルホワイト4000K LEDです↓

赤い色素タンパクの吸収スペクトルと温白色LED 4000Kのスペクトル

デコライト2700Kの赤630nm大盛りのスペクトルも良いのですが、陸生植物や水草と違い、サンゴに対してはちょい赤が強すぎる。。。それは、SPSカラーレポートからも判明しましたが、多くのサンゴは赤630nm前後の波長はあまり積極的には利用していませんでした。色素タンパクの要求580nmやクロロフィルaの660nmに対しては大きく窓口を開いているにも関わらず、赤630nmに対してはほとんどのサンゴが窓口を閉ざしていたのです。それは赤いサンゴに関わらず、他の色彩のサンゴでも同様の結果でした。
これはもしや・・・大半のサンゴは630nm前後の赤を嫌っていると言う事か?

そう言えば、こんな実験結果も出てましたよね。

赤光でサンゴが白化・・・

本来、海中にはあまり強く存在していない赤光のサンゴへの悪影響を考慮すると、やはりサンゴ用照明に用いるのは、630nmにピークを持つ電球色のウォームホワイト2700Kよりも、580nmにピークを持つ温白色のニュートラルホワイト4000Kを使用した方が、危険要因を排除するという意味では無難な選択肢と言えそうです。
ちなみに現時点での僕の赤光に対する解釈は、あくまで他の波長との強度バランスに極端な差異がなければ、単独で照射しない限り悪影響は薄いとみています。

赤系色素タンパクの吸収スペクトルに対するKR93XPの白チャンネルのカバー率↓

赤い色素タンパクの吸収スペクトルとKR93XP Wchのスペクトル

またもう一つの補足として、色素タンパクにはUV 400nmによる更なる色素濃縮効果(赤→赤紫化、青→青紫化)が挙げられます。これは植物の場合でもブルーベリーや赤い果実の色素濃度を促進するのが紫外線である事からも判るように、サンゴでも紫外線バリアとしての色素濃度促進効果が期待できます。勿論、多くのサンゴが持つもうひとつの紫外線バリアとしての蛍光タンパク(特にシアン蛍光より短波長励起蛍光タンパク)も、このUV 400nmによって強力に促進される事が確認されていますので、ことサンゴの色揚げに関してはUV 400nmは色んな面で欠かせない波長となっています。

KR93XPによるハナヤサイ・トゲサンゴの発色例↓

KR93XPはアンバー光確保のためにKR93SPと比べ約半分の量のUV素子をニュートラルホワイト素子に置き換えています。とは言え、それでも巷の製品よりは断然強いUV量が確保されています。

以上、サンゴの色素タンパクの色揚げに役立てて頂ければ幸いです。

こちらのエントリーもどうぞ♪

蛍光灯スペクトル早見表

この記事を含むタグの全記事リスト: T5 スペクトル 海洋雑学 蛍光灯

ふと、
蛍光灯だけでも今までどれくらいのスペクトルを調べたんだろう?
と思って、過去の記事を遡ってみました。

  1. GIESEMANN - PowerChrome midday
  2. GIESEMANN - PowerChrome aquablue plus
  3. GIESEMANN - PowerChrome Lagoon plus
  4. GIESEMANN - PowerChrome actinic plus
  5. GIESEMANN - PowerChrome pure actinic
  6. ATI - Aquablue Special
  7. ATI - Blue plus
  8. ATI - Actinic
  9. Wave Point - Tropical Wave
  10. Wave Point - Sun Wave
  11. Wave Point - Super Blue 460 (Blue Wave)
  12. Wave Point - Reef Wave
  13. Wave Point - Coral Wave
  14. SFILIGOI - Ultra White
  15. SFILIGOI - Deep Blue
  16. SFILIGOI - Super Actinic Blue 03
  17. UV Lighting - Aquasun
  18. UV Lighting - 454
  19. UV Lighting - Super Actinic
  20. UV Lighting - Actinic White
  21. KZ - 50%-50% (CoralLight 10000K)
  22. KZ - New Generation (14000K)
  23. KZ - Fiji Purple
  24. KZ - Super blue (20000K)
  25. JBL - Solar Ultra NATUR
  26. JBL - Solar Ultra Marin Blue
  27. VITA-LITE - 5500K
  28. VITA-LITE - 5500K (電球型)
  29. 東芝 - FL20SB 青色
  30. 東芝 - FL20SBW 青白色
  31. 東芝 - FL20SF 生鮮食品用 昼白色 5000K
  32. 東芝 - FL20SN-SDL ネオラインデラックス 昼白色 5000K AA
  33. 東芝 - FL20SN-EDL 色評価用 昼白色 5000K AAA
  34. 東芝 - FL20SD-EDL-D65 色比較・検査用 D65 昼光色 6500K AAA
  35. NEC - FL20SB 青色
  36. NEC - FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 5000K AA
  37. Panasonic - FL20SN-EDL 高演色性 昼白色 5000K AAA
  38. Panasonic - FL20SN-EDL-NU 美術・博物館用 昼白色 5000K AAA
  39. 三菱 - FL20SN-SDL ハイデラックス 昼白色 5000K AA
  40. 三菱 - FL20SN-EDL-NU 色評価用 昼白色 AAA
  41. JEFCOM - FT5-14BK ブラックライト (360nm)
  42. OHM - TB-14/BLB ブラックライト (370nm)
  43. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 10.0
  44. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 5.0
  45. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 2.0
  46. ZooMed - ReptiSun 10.0
  47. ZooMed - ReptiSun 5.0
  48. ZooMed - ReptiSun 2.0
  49. HERP-CRAFT (SUDO) - UV-MASTER Level 8
  50. HERP-CRAFT (SUDO) - UV-MASTER Level 5
  51. Pogona-Club - VIVARIUM GLOW Power UVB
  52. Pogona-Club - VIVARIUM GLOW Soft UV
  53. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 10.0 (電球型)
  54. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 5.0 (電球型)
  55. EXO-TERRA (GEX) - Repti Glo 2.0 (電球型)
  56. ZooMed - ReptiSun 10.0 (電球型)
  57. ZooMed - ReptiSun 5.0 (電球型)
  58. Vivaria - Repro UVB 10.0 Desert Sun (電球型)
  59. Vivaria - Repro UVB 5.0 Forest Sun (電球型)
  60. Vivaria - Repro UVB 2.0 Natural Sun (電球型)
  61. Kamihata - UVB Reptile (電球型)

自分で買ったモノだけで上記60種以上ありました(汗)
ま、UVB蛍光灯はアクアには直接的に関係は無いけど。。。

上記スペクトルを掲載した記事のリンク集
GIESEMANNATIWave PointSFILIGOIUV LightingKZJBLVITA-LITET8蛍光灯 (東芝/NEC/Panasonic/三菱)ブラックライト (JEFCOM/OHM)UVB蛍光灯 (EXO-TERRA/ZooMed/HERP-CRAFT/Pogona-Club/Vivaria/Kamihata)

アクアT5蛍光灯スペクトルグループ早見表

さすがにこれだけ調べると、アクアT5のスペクトルの規則性が嫌でも見えてきます(汗)
もはや、スペクトルの早見表が作れるレベルです♪

と言う事で、以下のようにまとめてみました。

マリンアクアリウム用T5蛍光灯グループ (3波長型)

アクアメーカー各社で、Blue系とActinic系は同一スペクトル、White系は多少の3波長のバランスの差異はあるものの、補完できる帯域はまったく同一です。また、ピンク系バルブも中身は青+赤なので、演色以外で混ぜる意味はありません。
但し、唯一Wave PointのUltra Growth Waveのように植物育成用のような660nmピークの蛍光体をブレンドしたモノもあります。なので、この球を使えば、直接的にクロロフィルaの赤側の要求に応える事が出来そうです。但し、褐虫藻のクロロフィルは喜ぶとしても、それによって光合成効率が必要以上に高まれば、特に蛍光レッドを持つサンゴあたりは、「あれ?可笑しいな?赤の波長が届く浅海域に来ちゃったかな?じゃあもう赤の波長を稼ぐための蛍光レッドは要らないかな?」と判断して、蛍光レッドを放棄しちゃう懸念もあるので、使用に際しては注意深い観察が必要です。例えば、スコリミアの蛍光レッドが後退して蛍光グリーンが占有するような場合は、サンゴをより暗い位置へ移動するか、光源の赤の波長強度を下げるなどの対処が必要です。
こうした挙動は、すべては「必然」について考察すると見えてきます。人間で言えば、外的なステロイド投与によって本来の副腎皮質からのステロイド分泌が減少してしまうようなモノです。生物が生理の均衡を維持するための適応に過ぎません。

尚、JBL Solar Ultra COLORも公称スペクトルを見る限り660nmの存在が見て取れますが、前回の調査でJBLは波長詐欺があまりに酷かったので、信用できるのかどうかは知りません。自己責任でお使いください(汗)

フラットスペクトルT8蛍光灯スペクトルグループ早見表

そして、そんな波長の欠落の多いアクアT5に、是非とも使って欲しい蛍光体構成を持つ国内のT8蛍光灯も早見表にまとめてみました。

フラットスペクトルを持つ国産T8蛍光灯グループ

こうした有益なスペクトルを持つT5バルブが、かつてアクア各社からリリースされてこなかった事が本当に悔やまれます。唯一期待したJBLさえ詐欺でしたし。。。

ただ、アクアT8に関しては、少ないながらも美味しいスペクトル製品があるようです。
例えば、スドーのオーシャンクリア 7800K

スドー オーシャンクリア

このスペクトルが本当なら、フルスペクトルを謳う資格は十分にありそうです♪
ちなみにスドーにはあと数種類のフラットスペクトルバルブがありました。
スドー凄いな。。。今度測定してみよう。。。

さて、上記フラットスペクトルを持つ蛍光灯の実測スペクトルもグループ分けしました。
上から、ワイドバンドブルー昼光色(UV 400nm+)昼白色 5000K、です。

グループ メーカー型番
ワイドバンドブルー 東芝 FL20SB 青色
NEC FL20SB 青色
PRINCE FL8B 青色
東芝 FL20SBW 青白色
昼光色(+UV 400) 東芝 FL20SD-EDL-D65 色比較・検査用 D65
NEC FL8D 昼光色
東芝 FL20SF 生鮮食品用
NEC FL20SN-SDL 高演色彩
VITA-LITE 5500K Ra94
昼白色 5000K 三菱 FL20SN-SDL ハイデラックス
Panasonic FL20SN-EDL 高演色性
東芝 FL20SN-EDL 色評価用
東芝 FL8N-EDL カラーイルミネーター用
Panasonic FL20SN-EDL-NU 美術・博物館用 紫外線吸収膜付
三菱 FL20SN-EDL-NU 色評価用 紫外放射吸収タイプ

フラットスペクトルT8蛍光灯の実測スペクトル

どうです? この美味しそうなスペクトルの数々。。。

せめて今、一般T8蛍光灯をお使いの方でフルスペクトルの理解を得られた方には、早速これらのフラットスペクトル蛍光灯をお試し頂きたいと思います。しかし、残念ながらT5に合うバルブはまだ無いので、それについては今後に期待して欲しいと思います。

海洋性光合成生物が持つ各色素に関する考察

前回はざっくりと2本の蛍光灯の組み合わせだけご紹介しましたが、より厳密にスペクトルを吟味されたい方のために、改めて海洋性光合成生物の色素に関する情報を以下にまとめておきますので参考にしてください。

まず、海洋には海藻やサンゴ等が持つ色素が多様に存在しますが、大きく分けると以下のような光合成色素色素タンパク蛍光タンパクに分類されます。
一口に「海洋」と言っても、水深によって届いている波長分布が異なりますが、まずは浅場から深場まで以下のような種類が確認されています。

海洋性光合成生物が持つ各色素

*光合成色素は視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録(数研出版)より
*色素タンパクと蛍光タンパクはAdvanced Aquaristより
http://www.advancedaquarist.com/2006/9/aafeature
http://www.advancedaquarist.com/2006/11/aafeature2
http://www.advancedaquarist.com/2007/6/aafeature2
http://www.advancedaquarist.com/2007/7/aafeature1
http://www.advancedaquarist.com/2012/12/corals
http://www.advancedaquarist.com/2013/11/corals

これはきっと海洋全体で見ればほんのごく一部に過ぎないのでしょうが、少なくともこれだけを見ても、海中に届いている波長が下から上まで隈無く利用されている事が読み取れます。そう、可視光線400-700nmに於いて、省いて良い波長は見当たりませんね。それは、上記の色素の吸収スペクトルをすべて重ね合わせ、海中の水深スペクトルと比べてみれば、より明確に判ります。

海中のスペクトルと海洋性光合成生物の色素の吸収スペクトル帯域

あとは、水深を増す毎に海中に届く波長は赤から順に減衰していきますから、目的のサンゴによって当てるべき波長の帯域は制限されていく事がお判り頂けると思います。深場なら主に蛍光タンパクのために400-500nmを中心に当てたり、浅場ならトゲやハナヤサイのような色素タンパクのためにアンバー580nmを中心とした波長も盛り込んでいく、勿論それらが破綻しないように水槽内に於いてもサンゴを適切に垂直分布させる、等の考察と工夫が必要になってきます。深場のサンゴを上に配置して浅場のサンゴを下に配置してしまったら、どんなに照明を工夫しても、深場サンゴに赤が強く当たったり、浅場サンゴにアンバーが足りなかったり、どっちつかずになりますからね。

ただ、現状のT8の問題は光量の確保です。灯具のサイズから言っても、水槽の上に並べられる数は必然的に決まってきます。例えば60cmの規格水槽なら、せいぜい一般2灯式灯具を前後に2台載せるのが限界でしょう。てことは20W×4=80Wか。うーん。。。
でも水槽直置きなら水面距離10cm程度だし、ギリギリ水中照度が確保できるかな?

と言う事で、前回の2本の組み合わせ例でそれぞれ照度/PPFD/UVを測ってみました。

用途 20W×2灯式灯具
2本 組み合わせ
水槽直置き10cm距離光量
JIS照度
lx
PPFD
umol/m2/s
UV(A+B)
uW/cm2
一般照明 NEC FL20SSEX-D/18-HG ×2
(3波長 昼光色 6700K)
14,030 237 8.8
超浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 5,880
(11,760)
131
(262)
43.8
(87.6)
東芝 FL20SF 生鮮食品用 昼白色
浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 5,458
(10,916)
116
(232)
44.2
(88.4)
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色
好日ソフト NEC FL20SB 青色 6,172
(12,344)
131
(262)
24.8
(49.6)
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色
深場LPS NEC FL20SB 青色 6,272
(12,544)
145
(290)
24.3
(48.6)
東芝 FL20SBW 青白色

* 上記は2灯式灯具1基(20W×2)での実測値で、括弧内は単純に2倍にした値

上記灯具を2セット水槽に直置きにするなら、各値は照度10,000lx、PPFD 200umol/m2/sをクリアしそうです。まあ、それでも暗いかなぁ。。。
浅場のソフトコーラル~深場のLPSくらいが無難かな?

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おいしい蛍光灯♪

この記事を含むタグの全記事リスト: T5 スペクトル 蛍光灯

アクアT5の未来のため、身近な蛍光灯バルブの中からフルスペクトル製品やワイドバンドブルー製品を見つけるべく、また既存の蛍光灯バルブの蛍光体バリエーションを把握しておくためにも、いくつかのバルブを取り寄せてみました。あいにく、全部T8ですが(汗)

蛍光灯バルブ各種到着

各発光色と価格。

蛍光灯バルブ各種光色

各発光色と、色温度・演色性の公称値と実測値の比較結果。( )内が実測値です。

蛍光灯バルブ品番と光色

ちなみに、いずれのバルブにも○PSEマークがありますが、蛍光灯バルブは経産省が定める電気用品安全法のうち、特定電気用品以外の電気用品(341品目) > 光源・光源応用機械器具 > 288:蛍光ランプ に該当するので、日本国内では○PSEマークが無いと販売する事が出来ません。なので、もし○PSEマークの刻印の無い蛍光灯バルブを見つけたら、危ないので経産省のご意見・お問い合わせフォームから通報しましょう。折り返し、経産省の製品安全課の担当者からメールが届くので、いつどこで購入したものか詳しくお伝えください。最終的には、担当者が首をかしげるような製品に対しては、経産省からの製品調査が入ります。但し、調査結果については守秘義務があるので第三者が知る事はできません(悪質なモノは経産省から該当業者に対して行政処分または警告がなされ、経産省のニュースリリースに掲示されるので、後日知る事はできるでしょう)

さてさて、気になる気になる実測スペクトルはこちら。

蛍光灯バルブ各種実測スペクトル

始めからフルスペクトルとワイドバンドブルーの目星を付けて注文したので、いずれも大変美味しいスペクトルでした~♪

メーカー 型番 適用 光色 演色
ランク
色温度
(実測)
演色性
(実測)
東芝 FL20SB 青色 - - - -
FL20SBW 青白色 - - - -
FL20SF 生鮮食品用 昼白色 - 5000K
(4822K)
Ra84
(Ra86)
FL20SN-SDL ネオラインデラックス 昼白色 AA 5000K
(4683K)
Ra90
(Ra85)
FL20SN-EDL 色評価用 昼白色 AAA 5000K
(4743K)
Ra99
(Ra97)
FL20SD-EDL-D65 色比較・検査用 D65 昼光色 AAA 6500K
(6092K)
Ra98
(Ra96)
NEC FL20SB 青色 - - - -
FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 AA 5000K
(4514K)
Ra92
(Ra91)
Panasonic FL20SN-EDL 高演色性 昼白色 AAA 5000K
(4805K)
Ra99
(Ra97)
FL20SN-EDL-NU 美術・博物館用
紫外線吸収膜付
昼白色 AAA 5000K
(4842K)
Ra99
(Ra97)
三菱 FL20SN-SDL ハイデラックス 昼白色 AA 5000K
(5091K)
Ra93
(Ra97)
FL20SN-EDL-NU 色評価用
紫外放射吸収タイプ
昼白色 AAA 5000K
(4862K)
Ra99
(Ra98)

あ、但しひとつだけ、東芝FL20SN-SDLはタダの3波長型ですが、これは あること を確認するために敢えて注文してみました。それは、今回各社の公称スペクトルを眺めていて気付いたのですが、もしかして生鮮食品用のバルブには大抵660nmが含まれている? と言う事を検証するためです。結果、植物育成用≒生鮮食品用を確信しました。 ま、価格的メリットはあまり無さそうですが、代用には十分であることと、バリエーションの少ない植物育成用と違って、生鮮食品用はこの660nmの放射強度に豊富なバリエーションがあるので、バルブの組み合わせによって目的の光合成量コントロールも可能になる、と言えそうです。水草などで興味のある方は一度お試しください。

生鮮食品用の蛍光灯スペクトルには660nmが含まれる

また、今回の調査で究極のマリンアクアリウム向けスペクトルの蛍光灯を発見しました。
味付け無しでこのままお召し上がれます♪
まさか、東芝が水深10M蛍光灯バルブを出してたなんて~♪笑

海中スペクトルと近似な蛍光灯バルブを発見!

なんと!
波長構成がそのまんま海中スペクトルやん♪
名付けるなら、ワイドバンドシアンかな?
これと、ワイドバンドブルーフルスペクトルホワイトを組み合わせたら、、、
ついに蛍光灯水槽にも太陽が降臨しますよ!

とりあえず国内の一般的なT8灯具の方は、上記バルブをすぐに試せます♪

一般的なT8蛍光灯灯具

巷の海水向けバルブの白系の多くは波長の欠落が多い3波長型なので、上記フルスペクトル白色バルブへ変更すれば色素タンパクに対するウィークポイントも克服されます。

ホワイト系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

また、海水向けバルブの青系もUV 400nmが欠落しているので、上記ワイドバンドブルーへ変更すれば蛍光タンパクはもれなく救済する事が叶うでしょう♪

ブルー系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

既存の蛍光灯を何本足しても補完できなかったUV 400nm域が、ワイドバンドブルー1本でガツンとカバー♪
蛍光タンパク励起波長域カバー率、世界最強!

そして、それらを白チャンネルと青チャンネルとしてブレンドした場合のスペクトル↓

ブルー+ホワイト系蛍光灯の今までとこれからのスペクトル

サンゴ飼育と色揚げのための夢の完全フルスペクトル蛍光灯構成を遂に実現!
もう、煩雑なバルブラインナップや波長不足に悩まされる必要はありません。
フルスペクトルな太陽の白とワイドバンドな深度の青、その2つさえあれば良い♪
まずは一般のT8灯具ユーザーさんからお試しください。

本数 用途 組み合わせ 実売価
2本 超浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 (400nm強化) \580
東芝 FL20SF 生鮮食品用 昼白色 (580nm/660nm強化) \800
浅場SPS 東芝 FL20SB 青色 (400nm強化) \580
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 \240
好日ソフト NEC FL20SB 青色 \370
NEC FL20SN-SDL 高演色彩 昼白色 \240
深場LPS NEC FL20SB 青色 \370
東芝 FL20SBW 青白色 \580

* 上記はあくまでも波長再現ですから、必要な光量については本数で確保してください

2本に独立したコンセントがあるなら、タイマーを併用して、朝夕は青チャンネルのみで蛍光タンパク促進、日中は青+白でサンゴ礁再現♪なんてのもお勧めです。
3本以上での組み合わせでお悩みの方はご相談ください。

T5ユーザーさんは、どこかのアクアメーカーが名乗りを上げるか、僕が実現に関わる機会を得るまで、気長にお待ちください。

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