昨年発見され、こちらでも何度かご紹介してきましたホンヤドカリ属の新種ですが、、、
本日ついに新種記載されました!!!

和名: エタジマホンヤドカリ
学名: Pagurus rectidactylus Komai, Saito & Myorin, 2015
Pagurus rectidactylus Komai, Saito & Myorin, 2015
Pagurus rectidactylus Komai, Saito & Myorin, 2015
Pagurus rectidactylus Komai, Saito & Myorin, 2015
そう、学名に僕の名前(明林)がっ!?
前回のカシワジマヒメホンヤドカリ/Pagurixus fasciatus Komai & Myorin, 2005に続いて、10年ぶり2度目の快挙です♪
詳しくはZootaxaに論文の要約があるのでご興味があれば♪
Zootaxa 3918 (2): 224–238 (11 Feb. 2015)
A new species of the hermit crab genus Pagurus Fabricius, 1775 (Crustacea: Decapoda: Anomura: Paguridae) from shallow coastal waters in Japan, with a checklist of the East Asian species of the genus (PDF)
TOMOYUKI KOMAI, YUMA SAITO & EIJI MYORIN
改めて去年を振り返ると、なんかイベントが目白押しでした。。。
そして今年も年明け早々、ヤドカリの学名に名前がっ!?
これもひとえに、いつも温かく応援してくださる皆さんのおかげ様々です!
でも~僕の日頃の行いも良かったよね???笑
もう、運使い果たしたかな???曝
と言う訳で、今後ともよろしくお願いいたします。
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7/31、8/1の2日間、越前海岸と美浜原発へヤドカリ散策に出掛けました。
最近、美浜原発でも例の新種が見つかったらしく、着実に北限が更新されてます♪
果たして今回も見つかるのか!?
まずは越前海岸から。
シュノーケルが楽しそうなポイントです♪

但し、水景はこんな感じ。。。
海藻で酔いそう。。。

海ぶどう?や、

キラキラ光る海藻、

越前海岸は複雑な地形の磯と多種多様な海藻が広がる特徴的な海岸です。
ヤドカリもたくさん見られました。(観察できたヤドカリは最後にまとめて紹介)
続いて、美浜原発近くの漁港に行きました。僕はお初です。

汗だくになりながら散策すること小一時間。。。
ついにあの新種っぽい?ヤドカリをゲット!!!
でも、、、なんか変?

そう! 本種最大の売りであるヒドロ虫のドレスをまとっていません!?
しかし、幸い今回も例に漏れずたくさん見つかったゴホンアカシマホンヤドカリとの差異の比較により、暫定的に本種が新種であるとの判定に至りました。その差異とは、、、
1. 体が収まりきらない小さな貝殻を背負っている(あるいは手足が長すぎて収容不能)

2. 歩脚以上に鋏脚も異様に大きく長いので普段は折り畳んで引きずっている

3. 貝殻をよく見たら一応ヒドロ虫がチラホラと着いてました(笑)

さて、一般種のゴホンアカシマホンヤドカリの方はと言うと、、、


↑こんな感じで、普通に殻に収まる肢体、普通の手足の長さ、です。
さらに、実は僕は以前一度だけ本種がヒドロ虫を脱いで普通の巻き貝に入るところを水槽下で目撃したことがありました。そして本種はその直後に脱皮しました!
なるほど!
そこから推測すると、通常のヤドカリは貝殻の中に隠れることで身を守りますが、本種の場合小さく脆いヒドロ虫の殻だけでは脱皮後の柔らかい体を外敵から守ることが出来ません。そのため、脱皮の前後だけ硬くて大きな普通の巻き貝に入るのではないか?と言う仮説です。
ま、今回の子の場合は結局殻からはみ出てましたが。。。汗
尚、今回はこんな怪しい結果(笑)に終わりましたが、先週にはこの同じポイントでヒドロ虫ドレスを背負った新種が確実に採取されているとのことなので、これで本新種の北限が福井県に更新されたと宣言したいと思います♪
これまでの生息確認地域は、広島県江田島、京都府舞鶴、福井県美浜、です。

* Google Mapより
今後も頑張って生息確認を進めていきたいのですが、今少し気になってるのは、ヨモギホンヤドカリのような季節による周期性の有無です。その理由は、本種が強く海藻に依存している点です。これまでも唯一採取できたのは海藻の中からだけなのです。砂地や岩場で見つかった例が皆無。。。そして今回の遠征では海藻の多くが高水温によって衰退気味でしたから、いずれ本格的な夏に向けて溶けて消失していくでしょう。
その時、本種はどこへ行くのか?
そのため、今後の調査結果だけで生息域を決定付けるのでは無く、季節も考慮した判断が必要になってきそうです。
最後に、この二日間で見られたヤドカリをまとめておきます。
- ホンヤドカリ
- ユビナガホンヤドカリ
- ケアシホンヤドカリ
- ホシゾラホンヤドカリ
- ケブカヒメヨコバサミ
- ブチヒメヨコバサミ
- クロシマホンヤドカリ
- イクビホンヤドカリ
- ゴホンアカシマホンヤドカリ
- オキナワアカシマホンヤドカリ
- ヤマトホンヤドカリ
- 新種エタジマホンヤドカリ(仮称)

ニコンの安価なCOOLPIX AW110(18M防水)で撮ってますが、なかなか綺麗でしょ♪
水中写真が手軽に撮れるのは、ビギナーには大変有り難いですね。
しかもWiFiでスマホに写真を送れるので(要アプリ)、今回もその機能を活用して現地からデジカメ→スマホ→facebookにリアルタイムに実況中継してました(但し、電池の消耗が激しいので予備のバッテリーは必須です)
また、水深計、高度計、気圧計、コンパス、GPSなども搭載されてるし、近くの主要施設の名前も出るし、それらの情報も写真に記録されるので、後から情報を確認したり地図表示機能もあるので大変便利です♪
そんな多機能な防水コンデジが3万円もしないなんて、良い時代になりました。。。
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今回発見されたホンヤドカリ属の新種は、今のところゴホンアカシマホンヤドカリ/Pagurus quinquelineatus Komai, 2003
に形質的に非常に酷似していることが判っています。特に僕のような素人目には、背負ってる殻が違うことと脚が極端に長いこと以外、コレと言って明確な違いが見いだせずに困っています。ま、殻と脚もそれはそれで明確な違いなのですが、出来れば模様とか色彩での違いが欲しい。「線が1本多ければゴホンだよ」的な判りやすさが♪
そこで、先日ちょうど知人からゴホンアカシマホンヤドカリを譲り受けたので、写真を撮って改めて比べてみました。上がゴホンアカシマホンヤドカリ、下が新種です。

色味の違いは撮影環境の差や個体差があるので、あまり当てにはなりません。特に新種の方は、脱皮後時間が経過したモノはコケだらけになり益々赤味を増すので、見た目は如何にもゴホンアカシマホンヤドカリ風になります。。。汗
顔つきはどうでしょう?
左がゴホンアカシマホンヤドカリ、右が新種です。

眼柄に入るシミそばかす、複眼のイヤらしさ、第一触角の色彩、口周り。。。
うーん。。。似てる。。。
別のアングルです。

新種の方は肢体がいちいち長いのは見てすぐ判ります。
が、模様とか形とか、チビとノッポの違いくらいにしか。。。笑
上から。

歩脚の縞模様が濃いか薄いか、ただそれだけの違い。。。笑
困ったなぁ。。。
でも、ふと指節を見てみると、

おおっ?
これは歩脚指節の前面(個体正面から見える面)の拡大写真ですが、左のゴホンアカシマホンヤドカリは明確に2本のラインが見えますが、右の新種は1本しか見えません!
これが識別に使えそうな種差か!?
更に詳しく見ると、両者とも内側に1本のラインと外縁に毛列が存在しますが、ゴホンアカシマホンヤドカリの方はこの毛列の生え際も色素の濃淡があるため2本目のラインとして見えるのですが、新種の方は毛列の生え際に色素の濃淡がないので内側のラインだけが1本見えている状態なのです。
この違いを種差として使えるかどうか、もう少し数をこなしていこうと思います。
その他、不明瞭ながらもこの指節の内面のトゲ列のトゲを数えてみたのですが、ゴホンアカシマホンヤドカリが12本前後に対して、新種の方はさすが脚が長いだけあって15本前後でした。ま、顕微鏡で見ないと明確な数は判りませんが、恐らくこれも種差の一つでしょう(上の写真は角度の問題で両者同じ脚の長さに写ってますが、実際は新種の方が明らかに脚はスマートで長いです)
あとは、駒井先生の論文を待ちましょう。
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