1.023world - ヤドカリパークとマリンアクアリウム -

海洋の仕組みと細菌・微生物から学ぶマリンアクアリウムサイト

1.023world Facebook

結果 Oh! Life (旧ブログ)

懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

雑学4.褐虫藻のメカニズムと種類

この記事を含むタグの全記事リスト: 海洋雑学

過去の関連記事はこちら。

  1. 雑学3.サンゴの白化のメカニズム
  2. 雑学1.サンゴと共生藻

サンゴのストレスと白化

前回の雑学3.サンゴの白化のメカニズムを改めて簡単にまとめると以下のようになります。

平常時の環境下 光合成効率OK、炭素固定能OK
高水温+光なし 光合成効率OK、炭素固定能低下
高水温+光あり 活性酸素上昇→光合成回路損傷
高水温+強光下 白化まっしぐら(汗)

白化フローとしては、まず高水温により褐虫藻の炭素固定能が阻害され、続いて光合成の余剰エネルギーが活性酸素を生成し、それが光合成色素の損傷やサンゴへのダメージへと繋がり、以降悪循環となって白化に至ります。

サンゴの白化耐性は共生している褐虫藻の白化感受性により決定づけられるため、サンゴは褐虫藻の選定または複数の褐虫藻と共生することで環境に適応していると思われます。そしてこの順応性が高く、また白化に強い褐虫藻と共生しているサンゴほど、白化耐性は強くなると言えます。

詳しくは雑学3.サンゴの白化のメカニズムを参考に。

褐虫藻の種類

まず、サンゴの褐虫藻は、プラヌラ幼生期に水平感染として体内に取り込まれます(遺伝ではない)。そして成長と並行して、環境に応じた褐虫藻の選定と取得が必然的に行われているようです。

褐虫藻は形態の違いにより10種程度に分類が進み、また現在では18SrDNA解析によりA~Hのクレードに分けられています。

以下、最近読んだ書籍やネットでかき集めたデータを元に、褐虫藻の種とクレードのリストを作成してみました。但し、なるべく種名(学名)が判明しているものに限定し、種名無しのサブクレードはデータが膨大になるので省略しています。

尚、文献の時期により情報が交錯しているため、なるべく新しい情報を優先して編集しましたが、なんせ無学による適当なリストなので予めご容赦下さい。誤りがあったら訂正しますのでお知らせいただけると助かりますです。

クレード 褐虫藻の種類 検出元
A A1 Symbiodinium microadriaticum subsp. microadriaticum クラゲ、サンゴ
A1.1 Symbiodinium microadriaticum subsp. condylactis (=Symbiodinium cariborum ?) クラゲ
A2 Symbiodinium corculorum シャコ貝
Symbiodinium meandrinae サンゴ
Symbiodinium pilosum サンゴ
A4 Symbiodinium (=Gymnodinium) linucheae クラゲ
? Symbiodinium natans 新種(2009)
B B1 Symbiodinium bermudense イソギンチャク
Symbiodinium pulchrorum イソギンチャク
B4 Symbiodinium muscatinei イソギンチャク
C C1 Symbiodinium goreaui サンゴ
D サンゴ
E E1 Symbiodinium californium Bに再分類?
E? Gymnodinium varians
F F5 Symbiodinium kawagutii
G サンゴ、イソギンチャク
H

現在、私的に注目(笑)している対紫外線色素 MAAs については、クレードAの褐虫藻が有しているそうで、このことから恐らく浅場の多くのサンゴがこのクレードAの褐虫藻を持つと思われます。一方、少し深場のサンゴではクレードAの必要性は緩和されるため、多様なクレードを広く有している可能性がありそうです。もちろん、クレードAを持たないサンゴに過度のUVを照射することは危険でしょうね(汗)

ちなみに、褐虫藻以外の共生藻としては、イソギンチャク等から緑藻ズークロレラと言う光合成藻が、ハナヤサイサンゴからヘテロカプサ属の渦鞭毛藻、ヒラムシからアンフィディニウム属の渦鞭毛藻が見つかっています。

サンゴと褐虫藻の共生は、サンゴによる嗜好性は見られるものの、必ずしも特定の褐虫藻に限定を受けず、環境によって別の褐虫藻や複数の褐虫藻を臨機応変に取り込んでいるようです。

参考文献

こちらのエントリーもどうぞ♪