1.023world - ヤドカリパークとマリンアクアリウム -

海洋の仕組みと細菌・微生物から学ぶマリンアクアリウムサイト

1.023world Facebook

結果 Oh! Life (旧ブログ)

懲りずに書いてみたりする結果オーライな日記

Boninpagurus sp.=オキナワアカシマホンヤドカリ?

この記事を含むタグの全記事リスト: ヤドカリ情報

ヤドカリネタが続いております♪

昨年のことですが、オキナワアカシマホンヤドカリがようやく決着したようです。
このたびの研究(Komai, T., C.-H. Yang, J. Okuno & T.-Y. Chan, 2011)で、本種の処遇はこのようになりました。

オキナワアカシマホンヤドカリ/Pagurus pilosipes (Stimpson, 1858)

オキナワアカシマホンヤドカリ/Boninpagurus pilosipes (Stimpson, 1858)

そう、ホンヤドカリ属からBoninpagurus属への帰属変更です。
また、属の和名もオキナワアカシマホンヤドカリ属と決まったそうです。

そして、さらに驚くべき事実が!?
なんと、これまでBoninpagurus sp.とされてきた不明種も、今回このオキナワアカシマホンヤドカリに分類されたのです!

・・・え?
アレが・・・コレ???

コレ

アレ

どちらも、オキナワアカシマホンヤドカリ/Boninpagurus pilosipes (Stimpson, 1858) ということに。。。

コレの方は、2003年に沖縄から数個体購入したことが有り、いずれの個体も大きく、特徴としては第一触角が全体的に褐色~ウグイス色で、黒いバンドは入りません

一方、アレの方は、僕が最初に見つけたのは2004年の越前海岸でしたが、その後高知や南紀からも報告が続きました。いずれも小さな個体で、一番の特徴は第一触角に黒いバンドが上下2本入る点です。

この「黒いバンド」の有無こそが、この両種の安定的な特徴だったのですが。。。

それが、今回の調査で、DNA解析からも別種を裏付ける決定打が見つからず、あえなく同種と判定されたそうです。
そんなこと、あるんですねぇ。。。

ま、でも長年の混乱が解けて本当に良かったです。
当時、コレの件で相談させてもらった際、駒井先生は既に動いておられましたから、ざっと10年超の研究成果ということですもんね。
本当におめでとうございます&お疲れ様でした~。
では、引き続き次のヤドカリを宜しくお願いします(笑)

最後に、アカシマホンヤドカリシリーズの解決を祝して、本シリーズの走馬燈をどうぞ♪

クロシマホンヤドカリ/Pagurus nigrivittatus Komai, 2003

2003年以前まで、アカシマホンヤドカリ/Pagurus pilosipes (Stimpson, 1858)に混同されてきた種。
2003年の駒井先生の論文により新種として分類された。

クロシマホンヤドカリ/Pagurus nigrivittatus Komai, 2003

こちらは珍しい赤い個体。

クロシマホンヤドカリ/Pagurus nigrivittatus Komai, 2003 赤い個体

アカシマホンヤドカリ/Pagurus erythrogrammus Komai, 2003

2003年以前まで、アカシマホンヤドカリ/Pagurus pilosipes (Stimpson, 1858)と記載されてきた種。
2003年の駒井先生の論文により新種として分類された。

アカシマホンヤドカリ/Pagurus erythrogrammus Komai, 2003

本種は、成熟個体は十分に赤いが、若齢個体は赤味は弱く褐色に近い。

ゴホンアカシマホンヤドカリ/Pagurus quinquelineatus Komai, 2003

2003年以前まで、アカシマホンヤドカリ/Pagurus pilosipes (Stimpson, 1858)に混同されてきた種。
2003年の駒井先生の論文により新種として分類された。

ゴホンアカシマホンヤドカリ/Pagurus quinquelineatus Komai, 2003

ゴホンアカシマを最初に見つけたのは2000年の南紀でした。懐かしい。。。

オキナワアカシマホンヤドカリ/Boninpagurus pilosipes (Stimpson, 1858)

2011年以前まで、オキナワアカシマホンヤドカリ/Pagurus pilosipes (Stimpson, 1858)と記載されてきた種。
2011年にオキナワアカシマホンヤドカリ属/Boninpagurus Asakura & Tachikawa, 2004へ帰属が変わり、種名をPagurus pilosipesからBoninpagurus pilosipesに変更。

オキナワアカシマホンヤドカリ/Boninpagurus pilosipes (Stimpson, 1858) 沖縄産

また、Boninpagurus sp.もDNA解析の結果、本種に分類された。

オキナワアカシマホンヤドカリ/Boninpagurus pilosipes (Stimpson, 1858) 越前海岸産

まさかこの子がオキナワアカシマホンヤドカリになるとは。。。
沖縄アカシマホンヤドカリとは言うものの、越前海岸にたくさんいます。。。笑

こちらのエントリーもどうぞ♪

チャイロサンゴヤドカリは新種と判明

この記事を含むタグの全記事リスト: ヤドカリ情報

紛らわしいのですが、判りやすく言うと、

過去に国内で幾度と見つかり、Calcinus anani Poupin & McLaughlin, 1998/チャイロサンゴヤドカリとされてきたヤドカリは、2009年に行われた久米島の大規模な調査KUMEJIMA 2009から実は新種であったことが判明し(過去の調査含む)、今回新たにCalcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012として新種記載されました。これにより、結果的にCalcinus ananiの国内での記録はなくなりました。どうやらC. ananiは今のところフランス領ポリネシアの限産種のようです。

と言う事です。

では、この両者は一体どんなヤドカリなのか?
ネットで拾える画像を拝借して比較してみました。

Calcinus anani Poupin & McLaughlin, 1998/チャイロサンゴヤドカリとCalcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012

Calcinus anani → decapoda.free.frより引用
Calcinus fuscus → biomar.free.frより引用 (但しC. ananiとして掲載のもの)

そっか。。。元々、見た目も結構違うんですね。。。疑いもしなかった。。。汗

今回の論文では、鋏脚の色彩やDNA解析の結果についても言及されており、ホロタイプには2009/11/19に久米島の水深66-81Mで採取されたシールド長3.2mmの雄個体が割り当てられました。

てことは、僕が以前宮古島から購入したチャイロサンゴヤドカリも怪しいな。。。
で、早速昔の写真をひっくり返してみると・・・
うむ。
やっぱりこの子もC. fuscusみたい。。。笑

2012年に記載された新種 Calcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012

と言う訳で、日本にはチャイロサンゴヤドカリは居るけど居ないことになりました(笑)
さて、和名は一体どっちのもの?
こゆこと↓

今までのヒストリー

  1. 1998年、Calcinus ananiがフランス領ポリネシア産から新種記載。
  2. 2002年、国内でも発見され「チャイロサンゴヤドカリ」の和名が付与。

Calcinus anani Poupin & McLaughlin, 1998/チャイロサンゴヤドカリ

今後のヒストリー

  1. 1998年、Calcinus ananiがフランス領ポリネシア産から新種記載。
  2. 2002年、国内でも発見され「チャイロサンゴヤドカリ」の和名が付与。
  3. 2012年、過去の国内のチャイロサンゴヤドカリは新種Calcinus fuscusと判明。
    和名「チャイロサンゴヤドカリ」は新種Calcinus fuscusが継承。
    Calcinus ananiは和名未定、国内未記録、ポリネシア限産種となる。

Calcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012/チャイロサンゴヤドカリ
Calcinus anani Poupin & McLaughlin, 1998/和名未定

リファレンス

こちらのエントリーもどうぞ♪

2012年に記載されたヤドカリの新種情報

この記事を含むタグの全記事リスト: ヤドカリ情報

怠けてた分を取り戻すべく、過去2年分のヤドカリ情報をゲットしました。
駒井先生、いつもありがとうございます。
今日はその中から今年2012年に記載された新種を軽くご紹介します。

ちなみに、本当は大きな画像で見てもらいたいのですが、いずれもネットでは拾えない有償の論文なので、小さな画像で雰囲気だけ味わってください(汗)

Calcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012

2009/11/19、久米島の水深66-81Mから採取された3.2mmの雄をホロタイプとした新種。

もしかして過去にチャイロサンゴヤドカリ/Calcinus anani Poupin & McLaughlin, 1998として掲載していた個体はこれだったのかなぁ?

Calcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012

画像は記載論文から引用

超ヤドカリ図鑑 > Calcinus fuscus Malay, Komai & Chan, 2012

Kumepagurus Komai & Osawa, 2012/クメジマドウクツヤドカリ属
Kumepagurus cavernicolus Komai & Osawa, 2012/クメジマドウクツヤドカリ

2009/11/15、久米島の水深50Mから採取された2.4mmの雄をホロタイプとした新種。

ヤドカリは新属新種がまだまだ出てきますね♪

Kumepagurus cavernicolus Komai & Osawa, 2012/クメジマドウクツヤドカリ

画像は記載論文から引用

超ヤドカリ図鑑 > Kumepagurus cavernicolus Komai & Osawa, 2012/クメジマドウクツヤドカリ

Pagurus tabataorum Osawa, 2012/チュラホンヤドカリ

2009/11/10、久米島の水深68Mから採取された4.0mmの雄をホロタイプとした新種。

チュラホンヤドカリ」と言うネーミングが良いなぁ~♪

Pagurus tabataorum Osawa, 2012/チュラホンヤドカリ

画像は記載論文から引用

超ヤドカリ図鑑 > Pagurus tabataorum Osawa, 2012/チュラホンヤドカリ

■リファレンス (いずれもZootexaが配布している抜粋版PDF)

こちらのエントリーもどうぞ♪