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Apogee MQ200の値の補正方法

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お待たせしました!
最新LEDシステムライトの調査結果の発表~!!!

最新LEDシステムライト

・・・の前に、もうひとつだけ予備知識の講習をお願い致します(汗)
それは、PPFD(PAR)メーターでのPPFD測定値の補正方法についてです。
あ、でも測定器に興味にない方はスルーされてOKです(汗)

今回の調査では、あるルールに従って大量に(笑)PPFDを測定しています。そして、その測定には、現在アクア業界でもメジャーで安価なApogee社のMQ-200を用いました。

PPFD測定風景

しかし、安価なだけに、実はちょい癖があります(汗)
ザックリ言うと、多くの場合、測定する光源によって測定値が低めに表示されるのです。
その理由は、MQ-200に採用されているセンサーSQ-110の応答特性にあります。
以下、Apogeeから取り寄せたSQ-110センサーの特性グラフです。

Apogee MQ200のセンサーSQ110のレスポンス特性

一般的に光合成有効放射PARは400-700nmの波長範囲を対象としていますが、このセンサーの特性からも判るとおり、300-400nm間でも右肩上がりの弱い応答があり、また400-470nm間は実際の値より少なく見積もられますが、逆に470-650nm間は110%程度に多く見積もられ、最後650nm以降はバッサリ切り落とされた特性になっています。
実はこれ、SQ-110センサー自体の特性に加え、T5のクールホワイト蛍光灯の測定に最適化(校正)するため、SQ-110センサーのレスポンスに対して10%程度の係数が掛かっています。470-650nm間の応答が100%を越えているのはこのためです。これらの事は以前からもよく知られた内容でしたが、今回改めてApogeeに確認を取りました。

MQ200の測定値に関するApogeeからの回答は以下の通りです。

  • T5 Cool White蛍光灯に最適化されている
  • 最大で約25%程度のロスが生じる (その場合、表示の約135%が真値)
  • 太陽光測定用の”SUN”モードは、”ELEC”モードの値を約114%にした値

だそうです。なるほど。
そこで、細かく検証していきましょう。

まず、最適化に用いられたと言う「クールホワイト蛍光灯」に近いと思われる一般的な昼光色6500Kの3波長白色蛍光灯でのSQ-110センサーの応答スペクトルを計算してみました。

三波長型白色蛍光灯6500KのSQ110レスポンス

注) 以下、グラフ中のMQ200は各光源スペクトルにSQ110の応答を掛けたモノです

はい。確かにほとんど誤差は出てません。
実際の校正用蛍光管なら、きっと99%を越えるのでしょう。

続いて、似たようなスペクトルのATI Aquablue Specialです。

ATI Aquablue SpecialのSQ110レスポンス

ちょっと下がったけど、まだ余裕で90%台を保持しています。どうやらこの調子なら、白色蛍光灯を測る分には、さほど測定値の誤差は気にしなくても良さそうです。

一方、「最大25%のロス」って、多分、太陽の時かしら?
と言うことで、太陽光のスペクトルでも計算。

太陽光のSQ110レスポンス

おお~。やはりガクンと減衰しました。でもまだ20%程度ですが。。。
ま、太陽光スペクトルは測定条件でコロコロ変わるので、そんなもんでしょう。。。
それに、670-700nm間のカウント次第でも違ってくるし。

ちなみに、あり得ないけど、全波長の理想光源でも計算してみました。

全波長光源のSQ110レスポンス

さすがに、この場合は減衰量が30%を越えました(笑)
それに、670-700nmを除けば約73%程になるので、やはり最大25%のロスと言うのは妥当なところでしょう。

最後に、LEDシステムライトも計算しました。
まずはフルスペ

KR93SPのSQ110レスポンス

げっ。10%以上ロスしてる。。。きっと400-420nmのUV域が多いからだろうな。。。
これは補正しないとアカン!

では、Radionはどうだ?

Radion ProのSQ110レスポンス

げげっ。フルスペほどUV域が無いのに同じ減衰率!
670nm前後の損失もなかなか大きいってことか!
じゃ、もしUV域や深赤域を持ってないなら、ここまでは減衰しない感じかな?

以上の事から、Apogee MQ200で各光源を測定する際は、

  • 蛍光灯・・・”ELEC”モードで測定した値がおよそ正しい
  • LED・・・・・”ELEC”モードでの測定値を約110-120%にした値が正しい
  • 太陽・・・・・”SUN”モードで測定するか、”ELEC”モードを114%にするべし

こんな感じになります。
とは言え、厳密にはスペクトルのカーブ形状に依存するので、できればスペクトルデータを用いて係数を割り出すことが理想ですね(汗)

いや、待て。。。

ホントの理想は、高価で正確なPPFDメーターで測る事だろう(苦笑)

そう、例えばスペクトロメーターベースのPPFD測定機能なら、MQ-200のような応答ムラもないから、かなり精度が高い。しかもデータが波長毎に分割されているので、PARの波長範囲を400-700nmや350-700nmのように後から自由に積分することも可能。
ま、欲しいけど買えません。。。汗

実は今回、最新LEDの調査結果をグラフ化するにあたり、PARの分布グラフに関してはドイツのHenning氏のフォーマットを採用しました。彼はgetSpec 2048というスペクトロメーターを用いて、スペクトルPAR照度を測定されていて、これまでに非常に多くのLED製品を測定し、グラフを公開されています。僕もその考えに共感したので、同じフォーマットでグラフを作り、世界的にデータを共有できたら良いな~と考えました。PARの分布特性と、PAR/Wattという効率表記が、とても判りやすくて有用なグラフなんです。

また、彼はMQ-200も使っており、今回の誤差に関しても検証記事を書かれてます。
ただ、その内容は製造元のApogeeの主張とは真逆に食い違っていて、当初は混乱しました(汗)。でも、僕も散々検証した結果、Apogeeが正解だという結論に行き着いたので、以降のPARグラフには今回の補正方法を反映させてます。一方彼は「MQ-200は実際より大きな値が出ている」という主張ですが、理論的に計算していくと決してそうはならない。きっと、彼のスペクトロメーターの校正ズレ、MQ-200の故障or電池消耗、光源のスペクトルの特異性、測定距離のミス、、、どこかに原因はあるんだろうけど、実際に現物を検証してみないと流石にこちらでは判りません。。。

実はグラフのフォーマットの件でHenning氏とメールでやりとりしてた矢先、偶然にも同じチームのRonny氏ともfacebookで知り合う機会があり、彼からも色々と技術的なアドバイスを受けました。波長関係で濃ゆい話ができる仲間が今まで居なかったので、超テンションマックスです♪笑
但し、ドイツ語→英語←日本語なので、話が半分くらい減衰してますが。。。
補正しないと(爆)

では、今度こそ最新LEDシステムライトの調査結果に続きます!
お楽しみに~♪

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フルスペの水深スペクトル

この記事を含むタグの全記事リスト: KR93SP LED LEDライト スペクトル プチ実験 出張 測定器

先日、ブルーハーバーに行った際に、プチ実験をしてきました。
前々から調べてみたかったんですが、なかなか機会に恵まれず、そして最近は記憶力も劣化してるので、なかなか思い出せず。。。汗
でも、今回はなんとか思い出しました!

フルスペ水槽の水深スペクトルの変化を測定してみよう♪

あー。思い出して良かった(笑)
でも、急遽思い出したため、何の下準備もなく。。。
それでも、幸いブルーハーバーにはUPRtek MK350WiFiコントロールキット、そして防水ケースがあるので、まあなんとか簡易実験は実現できました♪

いざ実験!
なかなかのザックリぶり♪笑

フルスペ水槽の水深スペクトルの測定風景(笑)

その前に注意点ですが、

  • 防水ケースに入れてるので全体的にUV域がややロスしている
  • ミドリイシを避けながら測定している
  • 測定位置や角度が測定毎に中心から微妙にずれている
    (灯具下の測定位置によって波長分布が厳密に異なる)

などなど、かなりアバウトなメガネで見てくださいね(笑)

まず、上記写真のような感じで測定した結果、以下のようになりました。
上が波長強度分布、下が相対スペクトル比較です。

水槽内のガラス面反射あり

スペクトルの言及の前に、まず光量について解説しておきます。
まず、この各照度は比視感度フィルターが反映されたJIS照度です。よく見かける安価な照度計での値とは性質が異なります。あれだと多分3-4万ルクスと表示されるレベルです。

ところで、ご覧の通り面白い結果になりました。
なんと、この条件だと水深30cmの光量が水深20cmより上回ってしまいました(曝)
なぜか?
もしかして、水槽内のガラス面の反射光が集中して局所的に明るくなってる???
と言う仮説の元、今度は前面ガラスの内側に黒いシートを貼り付けて再度測定!
そしたらこうなりました↓

水槽内のガラス面反射なし

ほほお!!!
今度は水深に応じて見事に段階的に光量が減衰しています!!!
なるほど、、、ガラス面の反射ってバカにできないんですね。。。
てことは、思うほど多灯しなくても光はガラス面の反射で水槽内を回ってるのかな?

話をスペクトルに戻しますが、ご覧の通り、450nmや475nmあたりに測定位置の差異による誤差がやや含まれるモノの(特にムーンの450nmの有無が大きく出る)、全体のスペクトルはほとんど変化がありませんでした。ただ、400nmの変化量に関してだけは水深によるロスと見なせそうですが、それにしても非常に微々たるモノでした。

よって、フルスペの水槽に於いてのスペクトル変化はほぼ無しと見て良さそうです♪

また、これは似たような集光レンズを持つ他のLED製品にも言えると思われます。
但し、メタハラや蛍光灯などはもう少し減衰量は大きいかも知れません。
それについては4年前に実験結果を示していますので参考にどうぞ。

以上、水深によるスペクトル変化は、水槽では心配ご無用のようですね♪

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アグラオネマの照明

ブログ エイジ 21:00 コメント2件
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LEDスペクトルデザイナー、ついに観葉植物の世界にも進出か!?笑

昨年の話ですが、「アグラオネマの照明が欲しい」と依頼を受けました。
あぐらおねまってナンジャラホイ?汗

アグラオネマ (まんじゅういしさんからお借り)

* 画像はまんじゅういしさんから拝借

アグラオネマは熱帯の森林の日陰に生息する植物で、あまり強い光は要らないとか。
とは言え、日陰に差す太陽の木漏れ日も当然フルスペクトルなので、例え光量は控えめで良いとしても、スペクトル設計は妥協せず最高のお持てなしで望みたい!
あわよくば、あの空の下と同じように、スクスクと満足げに育ってくれれば言う事なし!
ならば、やはり目指すは一般的な光合成色素の吸収スペクトル実現でしょうかね。

光合成色素の吸収スペクトル

アグラオネマの光合成色素がクロロフィルaかクロロフィルbか判りませんが、とりあえず陸生植物の成長に関しては、青の波長は400-470nm、赤の波長は640-680nmあたりをカバーすれば対応できそうに思えますけど、果たしてどうだろう?

そこで、念のためアグラオネマの吸収スペクトルも測ってみました。
特にアグラオネマはトリカラー(Tricolor)と言う3色のグリーンの迷彩模様が売り?ですが、その維持や鑑賞を考えても各色部分の吸収スペクトルを知っておくことは有意義です。
但し、クロロフィルを直接測定することは僕の設備上無理なので(汗)、あくまで葉の表面色としての吸収スペクトルを見てみることにします。

アグラオネマの葉の緑色の濃淡ごとに反射スペクトルを測定

もっとも薄いグリーン部分をGreen 1、中間のグリーンをGreen 2、もっとも濃いグリーンをGreen 3と定義し、それぞれを複数の部位で測定し、平均値を探ります。

緑色の薄い順にGreen 1/Green 2/Green 3と定義

まず、Green 1の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 1の吸収スペクトル

続いて、Green 2の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 2の吸収スペクトル

そして、Green 3の反射スペクトルから算出した吸収スペクトルです。

Green 3の吸収スペクトル

それらを比較してみると、、、

Green 1/2/3の吸収スペクトル比較

先述のクロロフィルのような明確な特性は判りませんが、少なくともそれぞれの吸収ピークはおよそ読み取ることができました。

Green 1シアン500nm/ディープレッド670-680nm
Green 2シアン490nm/ディープレッド660-670nm
Green 3シアン500-510nm/ディープレッド660nm

やはり、クロロフィルの吸収スペクトルと大きく異なる事も無く、目指すは一般の光合成色素のフルカバーで対応できそうです♪
ま、それが大変なのですが(汗)

で、出力はさほど求められないので、手始めにバイタルウェーブをベースにLED素子の換装を試みることにしました。ただ、設計だけならスペクトラを使えば簡単にシミュレーションが可能ですが、実際にはLED素子の厳密な出力、波長誤差、実装レンズの特性などが影響し、完成品の色温度や演色性、スペクトルは微妙に異なってきます。従って、結局はひとつずつLED素子を実際に換装していって、測定結果を確認していくしかありません。なかなか地道な作業になります。

こうして、バイタルウェーブ・リーフ(葉)製作プロジェクトは静かに幕を開けました。
それが去年の12月の話。。。

バイタルウェーブをベースに何度もスペクトルデザインを試作...

その後、スペクトルシミュレーション→実装→光学測定、の繰り返しです。
途中、必要な波長を得るために何度もLEDメーカーへ新たな素子を特注したり。。。
そして、延々と試作を繰り返すこと3ヶ月、試作回数は実に14回。。。
ようやくゴールが見えてきました♪

ようやくそれっぽいのが完成♪

色温度はやや高くなりましたが、日陰なので10000Kなら許容範囲でしょう。
演色性はRa91をマーク!
なによりこのスペクトルを見てください♪

完成品のスペクトル分布

太陽も思わず嫉妬するフルスペクトル!!!笑

そして、お気づきになられましたか?笑
そう。なぜか波長ピークが10箇所もありますぜ???
バイタルウェーブのLED素子は7ヶしかないのにホワイ???

はい。実は先日のデュアルチップLED素子を贅沢にたっぷりと使いました♪
なぜあんなに多様なデュアルチップを作っていたのかこれでお判りですね(曝)

バイタルウェーブ・リーフのLED素子構成

スペクトル合成時の波長強度を分散する意味でも、シングルチップとデュアルチップの使い分けは非常に有効なんですよ。

そうして完成した、バイタルウェーブ・リーフ(葉)がこちらです!

1.023worldオリジナル、バイタルウェーブ・リーフ(葉)

ベース筐体込みで2万円位になっちゃいましたが(曝)
だって、ディープレッド680nmのLED素子だけで4000円くらいするんだもん!
ま、巷じゃ何万で売ってますから、これでも激安ですけどね(汗)
それに、この680nmチップはドイツ製ですぜ!(残りのチップは全てEpileds社製)
そこまでして680nmを入れる必要があったのか?
と聞かれたら、答えはハ~イ~です♪ (タラちゃん風)
680nm素子入りの植物育成LEDスポットって、もしかして世界初なのかしら?
660-670nmはよくありますけどねぇ。。。

そして、完成品の光合成色素カバー率がこちら。

バイタルウェーブ・リーフの光合成色素カバー率

光合成色素が泣いて喜ぶフルスペクトル!!!曝

しかも、植物育成ランプにありがちなピンク照明(笑)ではなく、日陰でありながら高演色な観賞性も見事に実現した色温度10000K高演色Ra91、そして極めつけは葉の緑が引き立つようにグリーン530nmだけはシングルチップで波長強度を確保した上での、この見事なフルスペクトルです♪

まさに植物にとっての太陽の恵みが屋内に降臨~♪

特にこの530nmの調達には本当にこだわりました。何度か入手した素子はどれも520nm前後ばかりだったので、LEDメーカーに執拗に(汗)にお願いして探してもらい、結局530nmのLEDチップだけわざわざ台湾から調達して頂いたのです(苦笑)

成長・色維持に関してはこれからですが、ひとまず発色に関しては絶賛を頂きました!
あとは、アグラオネマ本人にも満足してもらえたら嬉しいなぁ~♪
ま、自信満々ですけども~笑

以上、かなり駆け足でザックリとお送りしましたが、ご用命はメールにて承ります。

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